1. はじめに：療育の仕事に不安を感じているあなたへ

療育の仕事は子どもの発達を支える大切でやりがいのある仕事ですが、一方で「大変そう」「自分に向いていないかも」と不安を感じる人も少なくありません。特にこれから福祉職に就く方や現場経験がない方にとっては、その実態が見えにくく、心配になるのも当然です。

本記事では療育の仕事の実情や向いていない人の特徴をご紹介。ぜひ就職や進路選択時の参考にしてみてくださいね。

2. そもそも「療育の仕事」とは？

療育の仕事に興味はあっても、「実際どんなことをするの？」とイメージが湧かない方も多いのではないでしょうか。この章では、療育の基本的な意味や目的、働く場所や職種、1日の業務の流れまでをわかりやすく解説します。

療育の基本的な意味と目的

療育とは、発達に遅れや特性のある子どもたちに対して、生活・学習・社会性などの発達を支援する専門的な取り組みです。医療的な視点だけでなく、教育・心理・福祉の多面的な視点から関わることが特徴です。

目的は、子ども一人ひとりがその子らしく成長できるよう、将来自立して社会で生活できる力を育むこと。遊びや日常活動を通じて、ことば・人との関わり・身体の使い方など、さまざまな力を引き出す支援が行われています。

働く場所と代表的な職種（児童発達支援、放課後等デイサービスなど）

療育の職場は、児童発達支援事業所や放課後等デイサービスが中心です。職種には保育士、児童指導員、社会福祉士、作業療法士などがあり、多職種連携が特徴です。

1日の業務の流れ（実例）

例えば放課後等デイサービスで働く場合、午前は個別支援や記録業務、午後は集団活動や保護者対応が中心です。子どもの様子を観察しながら、臨機応変な対応が求められます。終業前に振り返りや報告書作成も行います。

3. 療育の仕事が大変だと言われる理由

療育の仕事は子どもの成長を支えるやりがいのある反面、実際には「大変」と感じる声も多く聞かれます。その理由を具体的に見ていきましょう。

子ども一人ひとりに合わせた支援が必要

療育では、子どもによって発達段階や課題が異なるため、マニュアル通りの対応が難しく、常に柔軟な支援と観察が求められます。

保護者対応・連携のプレッシャー

子どもの支援だけでなく、保護者の不安や希望に寄り添う対応も重要です。信頼関係を築くには丁寧な説明や傾聴が必要です。

多職種とのコミュニケーションが必要

療育はチームで行う支援のため、保育士や療法士、医師など他職種との連携が不可欠です。情報共有や意見調整が重要です。

事務作業や報告書の多さ

支援記録や評価表、報告書など、日々の対人業務以外に多くの書類作成が発生します。文書の作成や一人で黙々と作業することが苦手だと、負担に感じやすいかもしれません。

感情労働による精神的な負荷

子どもや保護者の気持ちに寄り添いながら働くことで、感情のコントロールや共感の連続が求められ、知らず知らずのうちにストレスが蓄積されることも。プライベートと仕事をきっちり分けるなど、切り替えが大切です。

4. 療育の仕事に向いていない人の特徴

療育の仕事は誰にでも向いているわけではありません。ここでは、療育に向いていない人に見られやすい特徴をわかりやすく解説します。

変化に柔軟に対応できない

療育の現場では、子どもの体調や機嫌、行動が日々異なります。支援内容も子ども一人ひとりに合わせて調整が必要なため、柔軟に対応できないとストレスがたまりやすくなります。

決まった手順だけで動くことに慣れている人や、変化が苦手な人には不向きと感じる場面が多いかもしれません。状況を冷静に見極めて、臨機応変に動ける力が求められます。

子どもとの関わりが苦手

子どもとの関わりに苦手意識がある人には、療育の仕事は大きな負担となる可能性があります。療育では、信頼関係の構築や子どもの気持ちに寄り添う姿勢が大切です。

無理に接してしまうと、子どもが不安になり、支援もうまくいかなくなってしまうことも。子どもとの自然な関係づくりに苦手意識がある場合は、現場に入る前に体験や学びの機会を持つことがおすすめです。

共感力・傾聴力が乏しい

子どもや保護者の気持ちを理解する共感力や、相手の話に耳を傾ける傾聴力は、療育での支援に欠かせません。こうした力が乏しいと、相手の本音や困りごとに気づけず、信頼関係の構築が難しくなります。

一方的に指示したり、自分の考えを押しつけたりする対応では、療育は成り立ちません。相手の立場に立って考える姿勢がない人には、不向きな仕事と言えるでしょう。

共感力・傾聴力が乏しい

療育の現場では、保育士、児童指導員、心理士など複数の専門職と連携して支援を行います。チームワークが求められるため、自分の意見ばかりを優先したり、報告・連絡・相談（報連相）を怠ったりすると、支援の質に影響が出ます。

協調性がなく単独行動を好むタイプの人は、職場での孤立や業務の停滞につながる恐れがあるため注意が必要です。

成果をすぐに求めてしまう

療育では、子どもの成長がゆっくりであることも多く、明確な成果が見えにくいケースもあります。短期間で結果を出したい、目に見える評価がほしいといった思考の人には、もどかしさを感じやすい仕事です。

小さな変化に目を向け、積み重ねを大切にできる人が求められます。すぐに成果を求めがちな人には、療育の本質とのギャップに苦しむ場面もあるかもしれません。

メンタルが不安定・感情のコントロールが難しい

子どもとの関わりや保護者対応では、予想外の出来事や感情のぶつかり合いが起きることもあります。感情的になったり、自分の気持ちをうまく切り替えられなかったりすると、支援の妨げになりかねません。

療育には安定したメンタルと冷静な対応が求められます。ストレスをためやすい人や、感情をコントロールするのが苦手な人は、自身の心のケアも意識する必要があります。

5. 療育に向いている人の特徴とは？

それでは反対に、療育の仕事に向いている人の特徴はどのようなものになるのでしょう？

子どもに寄り添い、成長を支えるために大切な資質とは何かを見ていきましょう。

子どもに寄り添えるやさしさ・忍耐力がある

子どもとの信頼関係を築くには、思いやりのある姿勢と時間をかけて見守る忍耐力が不可欠。すぐに結果が出ない支援でも、あきらめず寄り添える人は向いています。

細かな変化に気づける観察力

子どもの表情や行動のわずかな変化に気づき、適切な対応を取る力が重要です。日々の関わりの中で「なにか違う」と感じ取れる人は信頼されやすい存在になります。

コミュニケーション力・協調性がある

保護者やチームスタッフと連携しながら支援を進めるため、丁寧な説明や相談、協力する姿勢が必要です。人と関わることが好きな人は活躍しやすいでしょう。

小さな成長を一緒に喜べる

「言葉が増えた」「友達と遊べた」など、わずかな進歩にも喜びを感じられる感性が大切。目の前の子どもの変化をポジティブに受け取れる人に向いています。

福祉や支援に対する強い意志・関心がある

知識やスキルはあとからでも学べますが、「困っている人を支えたい」という気持ちが原動力になります。支援に対する熱意は、継続する力にもつながります。

6. 不安でも大丈夫？向いていないかもと思ったら取るべき行動

インターンやボランティアで現場を体験する

実際の療育現場を体験し、仕事の雰囲気や子どもとの関わり方を学ぶことで、自分の適性を見極めやすくなります。

先輩や現場職員の声を聞いてみる

経験者のリアルな話を聞くことで、仕事のやりがいや大変さを理解し、自分に合うかどうか判断材料にできます。

資格取得や勉強で知識を深める

療育に関する専門知識を増やすことで自信がつき、支援の質も向上。学びながら自分の興味や適性を確かめることができます。

無理せず「自分に合う」働き方を模索する

体力や精神面に負担がかかる場合は、勤務時間や業務内容を調整し、自分に合った無理のない働き方を探すことが大切です。

7. 働きやすい職場を見極めるコツ

職場の雰囲気・研修制度をチェック

職場の雰囲気は長く働くうえで重要です。職員の関係性や新人へのフォロー体制、研修やOJTの有無などを確認し、安心して成長できる環境か見極めましょう。

見学・面談で質問すべきポイント

見学や面談では、日々の業務の流れやサポート体制、困った時の相談先などを質問しましょう。現場のリアルな声を聞くことで、自分に合う職場か判断しやすくなります。

求人票のどこを見る？待遇や人員体制の見方

求人票では給与や休日だけでなく、職員数・職種構成・配置基準なども要チェック。スタッフが過剰に負担していないか、人手が足りているかなどを読み取ることが大切です。

8. まとめ：向いていない＝働けないではない。自分の強みを活かせる場所を見つけよう

療育の仕事に「向いていない」と感じても、それが「働けない」という意味ではありません。実際には、経験を積むことで自分の適性や強みが見えてくることも多いのです。

療育の現場は非常に多様で、子どもと直接関わる仕事から、保護者対応や事務作業、チームでの連携まで幅広い役割があります。そのため、自分の得意分野や興味に合った働き方を見つけることができます。

たとえば、子どもとじっくり向き合うのが得意な人もいれば、計画作成や多職種連携に強みを発揮する人もいます。焦らずに現場での体験や学びを重ねることで、自然と自分らしいキャリアが築けるでしょう。

療育は決して一人でこなすものではなく、周囲のサポートやチームワークが大切。自分のペースで成長しながら、無理なく長く続けられる環境を探すことが、療育の仕事で活躍する第一歩となります。