1. はじめに

児童発達支援や放課後等デイサービスの療育の現場でよく聞く「個別」療育と「集団」療育。

ここで行われる「療育」は、子どもたちの発達を支援し、将来の自立に向けた力を育むことが目的です。

中でも「個別療育」と「集団療育」は支援の方法としてよく使われますが、それぞれに特徴と適した子ども像があります。本記事では、両者の違いやメリット・デメリットをわかりやすく解説していきます。

2. 個別療育と集団療育の基本的な違いとは？

療育にはさまざまな形がありますが、大きく分けて「個別療育」と「集団療育」の2つがあります。それぞれ支援の目的や方法、関わるスタッフの役割、そして子どもたちのニーズに違いがあるため、特性に合わせた選択が重要です。

2-1. 定義と目的の違い

個別療育では、子どもの特性を見極め、言語訓練や感覚統合、生活スキルなど目標を明確にして専門的なプログラムを計画・実施します。1対1なのでスタッフとの信頼関係が深まりやすく、集中した支援が可能です。

集団療育では、複数の子どもたちが同じ場で活動（スポーツや合唱、複数人で行うゲーム、ロールプレイングなど）を通して、集団生活に欠かせない社会性や協調性を育むことを目的としています。

2-2. 利用する子どもたちの特性とニーズ

個別療育は、集団に馴染みにくい、言語や行動に顕著な課題があるなど、より個別的な支援が必要な子どもに向いています。

一方で集団療育は、ある程度の集団適応力があり、他児との関わりを通して社会性を伸ばしたい子どもに適しています。発達段階や保護者の希望により、両者を組み合わせることも多く、柔軟な対応が求められます。

3. 個別療育のメリット・デメリット

3-1. メリット：

・一人ひとりの発達段階や課題に合わせたきめ細かな支援ができる

・体調や気分を含めその日の子どものペースで進められる

・専門職（ST・OT・心理士等）による専門的なアプローチが可能

・子どもとの信頼関係を築きやすく、安心感を得やすい

・特定のスキル（言語・動作・行動など）に集中的に取り組める

3-2. デメリット

・集団でのやり取りや社会性を学ぶ機会が少ない

・支援の幅が狭くなりがちで、日常生活への一般化が難しいことも

・他児との関わりが少なく、模倣・刺激が限定される

・支援時間が1時間など限られやすい

・支援者との相性が影響しやすい

4. 集団療育のメリット・デメリット

4-1. メリット

・他の子どもとの関わりを通じて社会性や協調性を育める

・模倣や観察学習がしやすく、自然な成長につながる

・集団生活に必要なルールやマナーを体験的に学べる

・活動のバリエーションが豊富で、楽しみながら学べる環境が整っている

・学校や自宅への送迎サービスを行っている事業所が多い

4-2. デメリット

・子どもによっては刺激が強すぎて不安定になりやすいことも

・支援が画一的になりがちで個別の課題に十分対応できないことも

・集団の流れに合わせる必要があり、個別のペースを尊重しづらい

・トラブルや対人ストレスが発生することがある

・スタッフ側の観察・対応の難易度が高くなる場面もある

5. 保護者が気をつけたい選び方のポイント3つ

療育を選ぶ際、保護者は子どもの特性や発達段階に合った支援が受けられるかを見極めることが大切です。個別療育・集団療育それぞれに適した子どものタイプがありますので、見学や体験を通じて、実際の支援内容やスタッフの対応、子どもとの相性を確認しましょう。

5-1. 子どもの特性や発達段階を見極める

コミュニケーションや集団行動が苦手な場合は個別療育、社会性を伸ばしたい場合は集団療育が適していることが多いです。

5-2. 家庭や保護者のサポート体制を考慮する

子どもへの関わり方や通所頻度、送迎のしやすさなど、家庭状況に合った形を選ぶことが重要です。

5-3. 施設の方針や支援内容を事前に確認する

実際に見学や体験を通じて、療育内容・雰囲気・スタッフの対応をチェックし、納得して選ぶようにしましょう。

また個別療育と集団療育をどちらか一方に決めるのではなく、子どもの発達段階やニーズに応じてバランスよく組み合わせるケースも増えています。たとえば、個別療育で苦手な課題にじっくり取り組み、集団療育で対人関係や社会性を育むといった方法です。保護者は子どもの様子をよく観察し、施設スタッフと連携しながら最適な支援環境を整えることが重要です。見学や体験を通じて柔軟に判断しましょう。

6. 現場で働く支援者の視点：就職先としての違いは？

療育業界に就職を希望する人にとって、個別療育と集団療育の違いを理解することは非常に重要です。どちらも子どもの発達を支援する点では共通していますが、支援内容や関わり方、働き方には大きな違いがあります。それぞれの特徴や職場環境を把握しておくことで、自分に合った職場や役割を選ぶヒントになります。ここでは、支援者としての視点から両者の違いを整理していきます。

6-1. 個別・集団での支援内容の違い

個別療育では、1対1で子どもの発達課題に応じた支援を行います。例えば言語や運動、認知など、特定のスキルに焦点を当てて深く関わるのが特徴です。一方、集団療育では複数人の子どもを対象に、集団内でのコミュニケーションや協調性、ルール理解といった社会的スキルの向上を目的とします。支援者は場面に応じた柔軟な対応や、全体を見渡す力が求められます。

6-2. 求められるスキルや姿勢の違い

個別療育では、子どもの微細な行動や反応を丁寧に観察する力、専門的な知識や分析力が求められます。指導案の作成や評価も細やかな対応が必要です。対して集団療育では、複数の子どもを安全に見守るマネジメント能力や、集団活動を円滑に進めるファシリテーション力が重要です。また、トラブル時の対応力や、全体の流れをコントロールする力も必要とされます。

6-3. 働くうえでのやりがい・課題の違い

個別療育では、一人ひとりの成長に深く関わり、課題の改善やできることの増加を間近で実感できる喜びがあります。一方で、対応の難しさや変化の見えにくさから孤独感を感じることもあります。集団療育では、子ども同士の関わりを支える中で、笑顔や協調行動の増加を見守るやりがいがありますが、集団をまとめる難しさや予測困難なトラブル対応に苦労する場面もあります。

8. まとめ

8-1. それぞれの特性を理解して、子どもと自分の未来に活かそう

個別療育と集団療育には、それぞれ異なる支援目的や方法、関わり方があります。子どもの特性や発達段階に合わせて適切な療育を選ぶことが、成長をより良く支えるカギになります。また、支援者や保護者がその違いを正しく理解しておくことで、無理なく子どもに合った環境づくりができます。療育の特性を知ることは、子どもにとっても支援者自身にとっても、今後の道を考える上での大きなヒントになります。

8-2. 働くうえでの視点を持ち、納得のいくキャリア選択を

療育の現場で働くには、自分に合った支援スタイルを見極める視点が必要です。個別支援でじっくり子どもと向き合いたいのか、集団の中で関わりながら社会性を育てたいのか、自分の性格や得意分野を振り返ってみましょう。どちらも福祉の現場で大切な役割を果たしています。現場を体験し、比較しながら「納得できる選択」ができれば、より充実したキャリアを築く第一歩となるでしょう。