【東京23区】学童にはどんな補助金が出ている?自治体ごとの特徴を解説!

【東京23区】学童にはどんな補助金が出ている?自治体ごとの特徴を解説!

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民間学童

学童経営

 近年、共働き世帯の増加と育児スタイルの多様化が進む中で、放課後を安心・安全に過ごせる「学童保育所」の存在感と価値が高まっています。特に東京などの都市部では、民設民営のいわゆる「民間学童保育所」が急増しています。

 その理由としては、

• 公設の学童保育所は利用時間が短い(延長利用が難しい、利用できないなど)。
• 公設の学童保育所は定員を超過するほど利用者が多く、狭隘環境が深刻である。
• 塾やスポーツなど、他の習い事と両立できる。
• 民間による独自のプログラムや保育体制が評価される


といったことが挙げられるでしょう。

 このような動きに対し各自治体は「運営の支援」や「利用料の軽減」、「設備補助」など様々な補助制度を整備し、民間運営者の参入を支えています。

 本コラムでは、東京都全体で提供されている共通補助制度(都型学童向け)や、東京23区それぞれが独自に設けている制度について、補助内容・対象・特徴・活用ポイントを整理しながらまとめていきます。


1. 東京都の共通補助制度について

 まずは、東京都内の民間学童保育所全体が一定の要件を満たすことで利用できる可能性がある補助制度についてまとめていきます。

【①東京都認証学童クラブ補助制度】
• 運営対象:東京都の「東京都認証学童クラブ」またはそれに準ずる民間学童。
• 補助額:クラブあたり上限619万円/年度。
• 対象経費:正規スタッフおよび指導員の人件費、教室・事務所として使用する家賃、 光熱水道費、 備品・教材費など。

 東京都認証学童クラブ事業は、東京都が創設した学童保育所の質向上に向けた独自認証制度です。受け入れ児童数(定員)や職員配置、施設面積など厳しい基準が定められており、それらを満たした施設が東京都認証学童クラブとなります。障がいを持つこどもたちの受け入れや、午後7時以降の長時間運営などへの加算も設けられる見込みです。
 年度ごとに「補助対象経費の見積書」「過去実績の報告書」などを提出する必要があります。また、 区と都の併給制度で、区独自の支援も上乗せできる場合がありますので詳細は各自治体の窓口へご確認ください。

【② ICT導入支援】
• 補助内訳: 業務管理システム導入→最大50万円、翻訳・通訳端末導入→最大15万円。
• 補助要件: 「放課後児童クラブ等におけるICT化推進事業」(国事業)を既に活用している、又は活用見込みであること。
• 補助対象: 業務のICT化を行うためのシステムの導入(利用者の入退所の管理に関する機能、保護者との連絡に関する機能等、研修のオンライン化、通訳や翻訳のための機器の導入。

 業務のICT化を推進するとともに、オンライン会議やオンライン研修を行うために必要な経費、通訳サービス等 の使用に必要な経費を支援することにより、利用環境を整備し、職員の業務負担軽減を図ることを目的とした補助金です。
 タブレットを活用した「日誌アプリ」で書類の電子化に成功し、事務時間が年間150時間短縮されたケースもあるそうです。

【③ 第三者評価支援】
• 対象:民間評価機関による外部評価の実施経費。
• 補助額:最大60万円/年度(都単独)。

 令和6年度から学童クラブが対象となる「東京都福祉サービス第三者評価」の受審を促進するため、設けられている補助金です。学童保育所の信頼性向上、保護者への安全性アピール、他自治体との連携交渉時に有効となります。

2. 各自治体(23区)の独自制度について

 次に、23区独自の民間学童保育所運営事業者向け・利用者向けの補助制度についてまとめていきます。
なお、現時点(2025年6月時点)での情報に基づいてご紹介いたしますので、各制度の詳細や最新の情報、申請方法や申請時期については各自治体窓口までお問い合わせいただくことをお勧めします。

1. 千代田区
• 対象:民設民営学童クラブ。
• 補助内容:入会金7,000円を保護者に按分して還元可能。教材費・プリント代、延長保育時間の料金も補助対象。
• 特徴:歴史ある学習塾との連携も想定されている構造です。 クラブ運営に柔軟性を持たせつつ、利用者負担を低く抑える設計となっています。夏期講習費・教材費込みのパッケージ運営を構築したケースもあるようです。

2. 中央区
• 対象:民設民営学童クラブ。
• 補助内容:基本利用料完全無料化(区が月額定額負担)。延長保育に使われる時間帯に月額5,000円の補助。
• 特徴:一部の利用者に大きな恩恵がある反面、クラブ側は区との定額契約を前提とした運営が必要となっています。

3. 港区
• 対象:延長保育利用の児童。
• 補助内容:延長時間のおやつ代全額補助(上限なし)。アレルギー対応費用や食材費にも一部補助あり。
• 特徴:高所得層の利用も多い地域特性に合わせ、質の高い食の提供が重視されています。栄養士や食育教材の導入にあたっても一定の補助があるようです。

《4. 新宿区》
• 対象:認可外・民間などの形態指定なし。
• 補助内容:障がい児加算(児童1人につき月額35,000円程度)。加えて、人件費補助(定額制)や福祉ニーズ対応研修費の支援制度あり。
• 特徴:インクルーシブ教育の先進区で、多様性重視の保育方針が見受けられます。障がい児支援専門員の配置による加算制度もあります。

《5. 文京区》
• 対象:都型学童クラブ。
• 補助内容:所得に応じた段階補助(全額・7割・3割)を実施。ただし「入会金・食費・延長保育料」は補助対象外なので注意が必要です。
• 特徴: 所得判定に基づき公平な負担設計がされています。所得判定結果が一定水準以下のクラブへの補助率UPなど、自治体主導の調整余地があります。

《6. 台東区》
• 対象:新規開設民設民営学童クラブ事業者。
• 補助内容:初期設備投資および備品購入費の補助。家賃補助制度により、安定した運営スタートが可能となっています。
• 特徴:旧下町エリアの再開発に伴い、地域新設型のクラブに積極的です。区が指定する業者との連携モデルも提示可能。

《7.  墨田区》
• 対象:未開設・民設民営学童クラブ事業者。
• 補助内容: ハード整備型支援→机や遊具などの備品補助。ソフト支援→指導員研修・保護者向け安全教室の講師料補助。
• 特徴:地域安全への関心が高く、防災訓練費用なども支援対象に含まれます。

《8. 目黒区》
• 対象:都型・民設民営学童クラブ。
• 補助内容: 新規開設助成+継続運営支援(年度1万円〜数十万円)。家賃に応じた加算支援あり。
• 特徴:長期運営に向けた安定支援設計がされています。 加えてICTや食育に関する外部コーディネート支援制度も併用可能です。

《9. 品川区》
• 対象:認可外・民設民営学童クラブ。
• 補助内容:クラブの協議結果に応じ、運営費・人件費などを区が個別調整で補助。給食提供への補助(約200円/食+衛生管理支援)もあり。
• 特徴: 区役所と継続的に調整しながら制度拡充を目指す事例があります。また、 隣接地域(大井・荏原エリア)で複数クラブが立ち上がりつつあるようです。

《10. 渋谷区》
• 対象:民設民営学童クラブ。
• 補助内容: 開設費・計画策定支援。スタッフ配置計画に応じた人件費サポートあり(新人スタッフ研修費用含む)。
• 特徴: 多様な学びの場として、フリースクール型学童にも範を広げています。経験者を講師として招く外部プログラムにも補助対象があります。

《11.  世田谷区》
• 対象:非課税世帯の利用者比率が高い民設民営学童クラブ。
• 補助内容:基本利用料月額5,000円補助。延長保育は月1,000円補助。
• 特徴:地域貧困対策の位置付けで、ひとり親世帯の利用も奨励しています。 区の子ども家庭総合支援センター連携モデルもあります。

12. 中野区》
• 対象:民設民営学童クラブ。
• 補助内容:児童数に応じ月額7万〜10万円の運営費。人件費・ICT・家賃に応じた加算有り。加えて、「障がい児受け入れ」「延長保育体制」に応じた支援も有り。
• 特徴:補助金が最も整理されているモデル区といわれるほど明文化された補助体系です。

《13. 杉並区》
• 対象:民設民営学童クラブ。
• 補助内容: 初期開設支援→家賃・備品90%補助。運営費→月最大50万円まで補助。
• 特徴: NPO法人向け支援枠が特に手厚く、公共性を重視するクラブに有利といわれています。 地域イベントと連携した出張プログラムも一部補助対象となっています。

《14. 豊島区》
• 対象:間食を提供する学童クラブ。
• 補助内容:月額食費500円(補食1,000円の50%相当)。
• 特徴: 食育を推進しており、地域栄養士との交流促進も図られています。

《15. 北区》
• 対象:都型学童クラブおよび区が認定する民設民営学童クラブ。
• 補助内容:運営費・人件費・家賃補助(上限あり)/ICT導入支援あり。
• 特徴:民間事業者との連携に積極的で、新規参入支援も整備中といわれています。

《16. 板橋区》
• 対象:民設民営学童クラブ、特に「都型学童認定」取得事業者。
• 補助内容:運営費・人件費補助/長期休暇中の給食補助(1食250円まで)。
• 特徴:「公設+民間」の複合モデルが多く、補助申請時の調整が必要となる場合があるようです。

《17. 練馬区》
• 対象:都型クラブに準ずる基準を満たす民設民営学童クラブ。
• 補助内容:運営費補助/開設初年度の家賃・備品購入補助(最大100万円)。
• 特徴:補助は年度単位で審査され、計画性と報告体制が重視される傾向があるようです。

《18. 足立区》
• 対象:区と連携協定を結んだ民設民営学童クラブ(法人格必須)。
• 補助内容:運営費の一部(月額定額)/非常勤職員の人件費補助。
• 特徴:高齢者福祉施設や地域交流施設との併設型に補助が手厚い傾向があります。

《19. 葛飾区》
• 対象:都型学童クラブおよび同等基準を満たす民設民営学童クラブ。
• 補助内容:運営費補助(月額10〜15万円程度)/給食費補助(300円/食)。
• 特徴:食育・防災教育に力を入れる学童に加点的優遇制度があります。

《20. 江戸川区》
• 対象:認可外保育施設扱いとなる民設民営学童クラブ。
• 補助内容:スタッフ研修費用・食事提供・アレルギー対応費用の一部補助。
• 特徴:地域防災との連携が強く、BCP計画策定で加算制度があります。

21. 江東区
• 対象:都型学童クラブ。
• 補助内容:初期開設支援(家賃補助・設備補助)/障がい児対応加算あり。
• 特徴:区の子育て支援部局と連携が密で、相談しやすい体制となっています。

《22. 荒川区》
• 対象:区が選定する委託・提携先の民設民営学童クラブ(NPO可)。
• 補助内容:基本運営費+特別加算(障がい児支援・延長保育加算)。
• 特徴:区主導の「地域子育てモデル事業」の中に学童支援枠が含まれています。

《23. 大田区》
• 対象:認可外民間学童(法人格を持つ団体のみ)。
• 補助内容:家賃補助/ICT導入支援/運営費補助(年額上限あり)。
• 特徴:競争性が高く、実績と外部評価の有無が採択基準に大きく影響するといわれています。

3. 補助制度を活かす運営戦略とは?

 これまで述べてきたような東京都および各区による補助制度は、民間学童クラブにとって非常に心強い支援策ですが、「資金の穴埋め」にとどめるのはもったいないといえます。
 なぜなら、これらの補助制度は単なる経費補填ではなく、地域に合った学童モデルを設計するための “戦略資源” として機能するためです。制度をうまく取り入れることで、他の学童と差別化できるだけでなく、子どもたちにとっても保護者にとっても価値の高いサービスへと発展させることが可能です。

 たとえば、早朝保育や19時半〜20時台までの延長に対応する「長時間運営モデル」を構築することで、共働き世帯や早番・夜勤・シフト勤務の保護者に寄り添った運営が可能になります。こうした長時間対応は、補助金を活用すれば人件費の負担を軽減しながら実現できます。
特に、世田谷区や中野区では、延長時間対応に対して一定の補助が用意されており、働く家庭にとって「帰宅後も余裕がある」日常を提供する手段となっています。

 また、近年注目されているのが、「食の支援を組み込んだ学童モデル」です。特に港区や豊島区では、間食・おやつ代の補助制度が充実しており、食材費や調理費用を賄うことが可能です。
これにより、「おやつはお楽しみ」だけでなく、栄養面・経済面・安心感の3つを支える柱として機能することになります。夕食まで提供すれば、遅い帰宅の保護者にとって「夕食づくりの負担を減らせる」ことになり、選ばれる&感謝されるポイントとなります。

 そのほか「ICTを導入した最先端学童モデル」なども考案できるでしょう。上述のとおり、東京都の共通補助制度ではICT導入支援が用意されており、業務管理システムや保護者連絡アプリの導入が推進されています。
これに加えて、板橋区のようにICT導入支援を区独自で行っている自治体も存在します。
ICTを導入することで、勤怠管理や利用実績の集計、日誌作成、保護者連絡などの業務を大幅に効率化でき、スタッフの本来業務である「子どもとの関わり」により多くの時間を充てることができるようになります。

4. 補助制度を申請する際の基本ポイントとは?

 制度を活用するためには、当然ながら適切な申請・確認作業が必要です。以下のポイントを押さえておくと、手続きがスムーズに進みます。

● 申請時期を見逃さない!
 多くの自治体では、年度当初(4〜6月)に申請受付が集中しています。一部では通年申請が可能な制度もありますが、予算枠の関係で早期申請が有利になることもあります。申請を検討する際は、事前に区の窓口に相談しておくと安心です。

● 提出書類の準備を万全に!
 補助金の申請には、以下のような書類が求められる場合が多いため余裕をもって準備を進めておくと良いでしょう。

• 法人登記簿謄本• 運営計画書・実施体制図
• 利用児童数の見込み
• スタッフの配置計画
• 保護者同意書(必要に応じて)

各区によりフォーマットや詳細が異なるため、最新の要綱を必ず確認してください。


まとめ

 東京23区には、東京都の共通補助に加え、それぞれの区が独自に展開する多彩な支援制度が存在しています。
これらは単に金銭的な補助にとどまらず、運営方針・対象児童・地域との関係性を再設計する上での「ヒント」にもなります。補助制度を賢く活用し、持続可能で高い質の学童保育所運営に繋げていきましょう!

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